2021年4月 新卒入社社員へ
「仕事をする理由を見つけなさい」
実家に帰ればまだ親が健在で、食事も準備されているだろう。もしかして部屋も掃除してありベッドも綺麗に整っているかもしれない。
学生を卒業したばかりの君たちに仕事をする理由を求めるのは酷である。
そうでなくとも若いうちは仕事をする理由は見つからない。また仕事をしない理由もみつからない。理由があるとしたら学校を卒業したから、就職するものだから、親を心配させたくないからというところではないか。
しかし仕事をする理由がないということは仕事が充実したものにならないということだ。楽しく、やりがいのあるものにもならないし自ら努力し苦労しようと思うことはない。仕事をする理由を見出せない人にとっての仕事はただ苦しく辛いものになる。それが毎日続くのだから地獄である。
今日が仕事人としてのスタートにたつ君たちに最初に伝えておく。
仕事をする理由を早く見つけなさい。
人の役に立ちたい。社会に必要な人材になりたい。人に認めてもらいたい。なんでもいい。日替わりでも構わない。好き、嫌いに関わらず私たちは人生の多くの時間を仕事をして過ごす。人生は誰のためでもなく自分のために生きるもの。その人生を彩りあるものにしたいと思うであれば仕事をする理由を早く見つけることだ。何の目的もなく仕事をする毎日は鳥かごの中で餌を待つ小鳥となんら変わりはない。仕事をする理由を早く見つけなさい。
仕事をする理由を見つけた時、初めて大人になったといえる。
「お金は目的にあらず。自分の価値を高める仕事をしなさい。」
私は親の事業を引き継いだのち、紆余曲折を経て社内でリフォーム事業を立ち上げ独立という形でこの会社をスタートさせた。高い志があったわけでもなかったが最初に決めたルールが3つあった。
公共工事はしない、下請けはしない、入札には参加しない。
私は早期に起業を親に認めてもらう必要があった。そのため独立性が重要だと思ったし、自身の性格上、自立心と独立心が強かったことだと思う。
事業を開始し2年ほど経った時、業績が思うように伸びない時期があった。雇用も維持しなくてはいけない。短期間で成果を上げないと周りにも認めてもらえない。そんな重圧のかかっていたある日、行きつけの床屋に入った。そこで隣に座った知り合いの方がいたのだが、その人と仕事の話になった。
「蜘手君、リフォームの仕事始めたんだって?調子はどう?」
「いや、商売って楽じゃないですね。順調ではないです」
「そうだろ、そんなに甘くないだろ。仕事、欲しいんだろ?うちの屋根、葺き替えの時期だからやりたければやってもいいよ」
商売人ならありがとうございます、と言って契約を取りにいくべきだろうが私はその時、ぐるぐると頭の中に色々な思いがよぎった。すぐに返事ができなかったが、結果的にはお断りをした。
その日の夜なかなか寝付けなかった。仕事は欲しかった。お金が必要だった。頭を下げれば済む話だった。
しかしそうはできなかったし、したくなかった。若造でも一国一城の主人。頭を下げて憐れみをうけてまで仕事をしたくなかった。悔しかったのか、苦しかったのかその夜、涙が出てきた。
寝付けぬ夜を過ごした私は翌朝、私はこの思いを忘れぬよう手帳に書いた。
「リスペクトのない仕事など不要。お金が仕事の対価ではない」
資本主義は消費経済でありお金が必要な社会である。それで生活し家庭を育む。お金を得ることは仕事の動機になる。しかし目的にはならない。
若いうちはわからないかもしれないが稼ごうと思えば思うほど結果的に人生は苦しくなる。いい給与が欲しい、高い報酬を得たいと思うのであれば、自身の価値を上げる仕事をしなさい。それが結果となる。
報酬とは仕事の対価ではない。自身の存在価値である。
「自ら顧客と機会を創りだし、顧客と機会によって自らを変えよ」
好きな言葉で弊社の社是である。仕事を通じて自分の価値を高めてほしい。
KUMODE